永遠に縁のない
2017/08/22
信号待ち。自転車の荷台に子供用の座席を取り付けた主婦とその子供。
その自転車の後ろに立っていた男に3、4歳とおぼしき荷台の女の子が手を伸ばす。
男は気さくに軽く手を上げ、女の子はそれに手を振る。男はニカッと笑い、手を振り返す。
気配を感じたのか、いかにも「もぉ~、うちの子がすいませぇ~ん」という顔で母親が振り返る。
が、ヒッ、というような表情と仕草で母親はのけぞる。
それもそのはず、男は十中八九ホームレスで、ヒゲは伸び放題、夏を過ぎ去らせようとしている肌は赤黒く底光りし、髪は整髪料ではない光り方で、ヌルヌルと白と黒を交錯させていた。
こんな描写をして、子供は無邪気だなあ、などと書いてしまうから、僕はくどいのかもしれない。
母親は信号が早く青になることを願っていたんだろう、青になるやいなや立ちこぎで走り去っていった。
不潔なるもの、清純なるもの。
どうでもいい想像だけど、そのきったねえオッサンも生まれてきた時は“玉”のようだったろう。
そんなのはくだらなすぎることなんだけど。
同じような場面に出くわすと同じように感慨を抱いてしまう。
ぼくは進歩しているんだろうか、なんて。
今朝はちょっと久しぶりに絵筆を握った。久しぶりだと、なんか緊張する。おれは絵なんて描けてたっけ? 真顔で思う。
広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。
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