時間と思い出と他人について
2017/08/22
いましがた昨日買ってきた古本を開くと巻末に画像のような書き記しを見つけた。
1987.5.2 読了
それを見て僕は思わず微笑んでしまった。こんなことを書き記すなんて、まるで僕みたいな奴だ。
1987年と言えば僕は5才で、たぶん畳に顔を張り付けて何やら必死に探していたころだろう。
会社から帰ってきた父はその僕の姿を見て言った。
「とも、何しよるんや?」
「ダニ、ダニが居る!」
もちろんダニが肉眼で見えるわけはなく、しかし昆虫図鑑でダニの存在を知った僕はさっそく探していたというわけだった。そのとき父は、こいつは昆虫学者になる! と思ったらしい。まったく無理もないことである。
閑話休題。
推理は続く。
1987年にこんな文庫本を読むということはきっと高校生以上だと思われる。一応なんの本か書いておくと、ショウペンハウエル著「読書について」という本である(いちいちなんの本か書くあたり、おれはこんな本読んでるんだぜい!といういやらしい意図が見え見えだけど僕は多分にいやらしい性格だと思う)
で、17、8才の青年が1987年に読了して今だとすると、四十路あたりのおっさんになっているんだろうか。こんな本を読んで、今では出世しているだろうか、はたまたリストラでもされているだろうか。
そのおっさん、どんな気持ちでこの本を手にしたんだろう。時間と、人の手から人の手への流れ、そう考えるとSFっぽい単語だけどまさに“時空を超えて”僕のもとにやってきたようで。
なんか、素敵だ。
広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。
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