我が身の怠惰さを知る年の暮れ

  2017/08/22

つまり、どこにも行きたくない-F1000844.jpg

なんとなく風邪気味、ただそれだけでついつい横になってしまう今日この頃。
やるべきことが少ないせいかもしれない。
大掃除は引越と一緒に終わったし、忘年会の類はウコンの“ウ”の字も必要ないくらいの回数しかない。はたまた正月の準備の買い出しなんてのも特になく、あとはこの絵は年内に描き上げよう、というくらいのもので。
しかしラジオからは「年内最後の放送になるわけですが…」なんて切り口ばかりが流れてきて、それで否応なく年末だということを意識してしまい、僕ももうちょっと浮かれなくちゃ、なんてよくわからない気持ちになったりして、しかし出不精なので「浮かれ気分」=「惰眠」としかならなかったりする。
しかしまあ部屋がきれいなだけで自己満足がふつふつと込み上げてきたりする。
そんな我が城に磨きをかけるべく昨日は観葉植物を買いに行った。前のストレリチアがあっさり逝ってしまったので、今度はもっと丈夫な、強いやつを下さいと、近所の花屋、その名も「フローリスト原田」に。
店名から想像すると、假屋崎省吾みたいなやつが「いらっしゃぁい〓」てな感じで出てくるかと思ったのだが、店主は筋張った無愛想な無骨者な感じだった。そして何度もしもやけになり治りを繰り返したんだろう岩のような手の持ち主だった。
で、僕は奥で花を切り揃える作業をしていたフローリスト原田を「すいません」と呼んだ。しかしやはり無愛想でこちらに来るまでたっぷり2、3分は待たされたのだった。(店が恐ろしく広いわけでは決してない、むしろ狭い)
ようやくで来たフローリスト原田に僕は聞いた。
「これは育てるの簡単ですが?」
「ああ、簡単だよ」
「ポトスとどっちが丈夫ですか?」
「ああ、ポトスより全然強いね」
「じゃあこれ下さい」
このやりとり、約30秒。間髪入れず岩の手が植物を持ち上げレジに持って行く。
「あの、受け皿も もらえますか?」
「はいよ」
店主は白い受け皿を出し、植木鉢の下に敷いてビニール袋に詰めた。
「受け皿はおまけ」
無愛想で無骨な店主はそう言って、少し微笑んだようだった。しかし帰ってからその受け皿を見るとけっこう汚れていて明らかに他の植物で使っていたけど今は使ってなくて要するに余ってただけなんだけどおまけって言っとけばこの野郎はうちの店、その名もフローリスト原田を“いい店”と思うだろうというような魂胆が透けて見えるようで、そう考えると先ほどの微笑みは一転、嘲笑とさえ思われて、名は体を表すなんてのは嘘っぱちだ! なんて思ったのであった。
ちなみに新しい観葉植物はパキラとかいう品種で、とにかくは丈夫らしい。まあ元気が一番だと思う。人間でも動物でも植物でも、ね。

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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    2007年より開始。実体験に基づいたノンフィクション的なエッセイを執筆。アクセス数も途切れず年々微増。不定期更新。

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