振り返らないフリ

最終更新: 2017/08/22

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昨日の夜は雨が降りそうで降らなかった。降れとは思わないが、雨粒を落とさない空に不透明なビニール傘は所在なげで、僕はたわむれるように、あやすように、傘をぐるぐる回しながら帰った。
今日はいよいよ晴れ渡ってしまっている。昨夜のビニール傘は樋口にもらった黄緑色の傘立てに突き刺さって微動だにしない。傘の出番はない。
傘の気持ちを考えているわけでもない。ただ 、傘に自分を重ね合わせたい気分なだけだ、て、どんな気分だそれは。
とても久しぶりなことをした。良いことではなくよくないこと。何かこう、イライラして壁を殴った。いつぶりかはよくわからない。
思いがけず派手な音がして自分でびっくりしてしまう。でもその音が無かったとしたら僕はもう一度殴ってみるんだろうと思う。
映画とかで、よく悔やんでも悔やみきれないとか怒りの時とかに壁をダンダン叩くけど、なぜに人はそういう時に壁を叩くのだろう。
壁は怒りや悔やみで、叩くのはそれを打ち崩そうとする行為なのかもしれない。
なんにしろ、イライラなんかしないに限る。イライラするのは幼さ意外のなにものでもないような気がする。しかし僕は、いつから神のように振る舞うようになったのか、と、ふと思った。
このままだとたぶん、死ぬときはピノキオよろしく高くなりすぎた鼻が折れて死んでしまう。
だからどうにか、鼻が折れてしまわないように、ほとんど気づけないような影響力で、伸び続ける鼻を地面へ向かわせて、いっそ三本足にでもしてくれないか。

何かしら思った方は、ちょっとひとこと、コメントを! 作者はとても喜びます。

わかりやすく投げ銭で気持ちを表明してみようという方は、天に徳を積めます!

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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