少数派にある幸福
2017/08/22
最近自分が嘘臭い。すぐに「最近」とか、ある傾向でくくってしまうのは性癖。昨夜はプロフェッショナルという番組の吉岡徳仁というデザイナーの回をYouTubeで見た。酒を飲みながら見ていたせいか、後半あたりで泣いてしまった。あれはなんという感情だろう。僕にとっての感動かもしれない。
最近最近しつこいけど、最近はそれほど感傷的じゃなくなった。厭世観もほとんどない。だから、昨夜泣いた僕は僕から見て、それほど嘘っぽくはないように思う。
何に感動したって、なんだろう、華々しいような現在の地位にそぐわない感じの鈍いいじらしさが彼にはあって、それはどこか虐待されてもなお親を慕う幼児の痛ましさに似ていた。食らいついて離れない、という。無垢なんて言葉は不純を肯定する言葉でしかないけれど、なんだか、無垢だと。あるいは僕は、単純に彼に憧憬を抱いたのかもしれない。
まあそういうわけで今日は3時前に起き出して作業を始めた。実際、夜更かしして作業するより早起きして作業する方がはかどる。何より携帯が鳴らないのがいい。それでちょっとだけ浮き世離れした感じで、自分の中に没頭できるのもいい。どこか大学のときのような気分にもなる。そうだ、僕は一人が好きだったんだと、しっかり思い出す。
でまあ次の個展を絵を描いてたんだけどあんまりつまらなくて衝動的に80号のキャンバスを張ってみた。なんとなく、自分の立ち位置、存在意義があやふやな気がして、おれはやるんだと、何か絶対動かなければならない形を、まだしばらく描き出さないにしろそばに置いて生活したいと思った。僕の毎日に、余力は腐るほどあると思う。たぶん、大してがんばってないから、自信が薄れてるんだろうと、無理矢理に思い込む。人生はおそらく短いから、がんばるべきだ。明日の気分は知らないが頑張りすぎるぐらいでちょうどいい気がする。鉛筆なら最後は粉になるまで使うべき。長いまんまで捨てるような人生なら、1ダースのケースに収まってるままの方がまだマシだ、と、これまた無理矢理思い込む。
広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。
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