寒々しいのは指先
2017/08/22
この地に引っ越した夜、ぼくはひとりひどく後悔したものだった。
殺人ババアあまた、孫はババアに連れさられ殺されるのだ。
閑話休題。
昨日ぼくは2001年宇宙の旅を見た。二度目である。天才鬼才キューブリック。
高校生か、いや、大学生のころの夜にこれを見た、気がする。
ぼくは“変わり者”にひどくあこがれていたような気がする。
ここからはちょっと小説家ぶって、その時のぼくの空気感とかを描写するんだ。ぼくはこんなにもなになにでしたよ、と。
しかし実際僕の過ごした夜は尊く、すばらしい。
ビデオ屋でのバイトがふけた深夜の2、3時、クーラーがエコという言語をぶっ潰すような勢いで稼働し、冷却されていた6畳、ぼくのお城。
ぼくは小学校の時分から使っているミッキーのタオルケットを裸の体に巻きつけて、ソニーのトリニトロンのブラウン管でそれを鑑賞したのだ。
夜は深く、僕の心も深かった。悩みが、何か具体的な悩みがあったわけじゃないけれど、その夜はぼくにとってまさに“夜”でありなにものにもかえがたい時間であった。
今は思う。
ぼくはあんまり頭がよくないんだなと。
だって、その映画の内容がいまいちよくわからない。
しかし、何かすごいものを見たような気がした。
氷のようなベッドに一人しがみつくように眠った。はてはて、時間が経つのは早いもの。笑ってしまう。
広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。
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