学ばない人

最終更新: 2017/08/22

おそらく大半の人は 忘れてしまってると思うんだけど、どうにかこうにか禁煙を続けられてます。

煙の代わりに酒飲んで、頬を赤らめつつ連夜、絵を描いている。酩酊して芸術作品が作れるわけがないだろうと考える人も多いだろうが、僕としては、酩酊も素面も僕が僕であることに変わりはないと思うから、別に気にせず酒を飲む。でも一人で飲むとテンションはあまりあがらず、体がじんと痺れた感じになり、ちょっと眠くなる。

気を紛らわせようと歯を磨く、ガムを噛む、それからツマミでも食べようと豆腐や納豆を食べる。なぜそんなツマミを選ぶかといえばデブになるのが恐ろしいからだ。

ああ、考えるだに恐ろしい。もしも僕がデブになったらと。

かわいく言えばぽっちゃり系、と言えなくもないがその実は単なる太い人であり恰幅がいいねと揶揄される人であり結論ブタとすれ違いざまに囁かれる人種である、だろう。

昨日まで愛し合っていた恋人は「あなたと居るとニキビが増える」なんていう納得できそうでできない理由で去っていき、一人になった僕は下宿先を引き払ってピカドンの地に傷心の帰郷。

せめてせめて優しい家族の肯定をと実家に帰れば、そのままじゃ嫁のもらい手がないよと、今さらなリンゴダイエットを強要される。実家に帰ったばかりで無職なのに、肥満の人はそうでない人にくらべて医療費がかさむからと雀の涙的所持金を暗い未来予想図のために奪われる。

そんなある日突然に見合い話があって、僕は北朝鮮にとつぐことになる。そこで僕に課せられた仕事は生きた彫刻、銅像になることだった。

台座の上に雨の日も風の日も雪の日もただただ立っているだけ。

それというのも、やせこけた人民が僕を見ることによって「自分もあんなふうにお腹いっぱいになりたい!」となって志気を高めるため、いわば政治の上での戦略、プロバガンダとしての機能を担わされているのだった。

そんなふうに、時に体格は人生を変えてしまうから、僕は太りたくないのだ。

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新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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