夢とロマンは無駄の中

最終更新: 2017/08/22

久しぶりにアイロンというものを使った。その感覚は懐かしさを通り越してただ違和感だった。

前に使ったのはいつだったか、記憶をたぐっていくと自分がどんどん若返ってしまうから、恐らく中学生か高校生かくらいの時以来なんだろう。

アイロンで思い出すのは何故か「おそ松くん」で、イヤミがカップラーメンの出来上がる3分の間に、カップの底を使ってアイロン代わりにするという、別段おもしろくもない場面だ。と、今思ったけど「おそ松くん」て言葉、すごく違和感がある。それだけ僕から遠くなってしまった言葉ということか。

その年代でもないのに何故におそ松くんなど知っているのかといえば、小学校くらいの時の姉の誕生日プレゼントがおそ松くん全巻だったからだ。姉のプレゼントだったにも関わらず、僕はたぶん姉よりも早く全巻を読破した気がする。

それからまあ2、3ヵ月も経ったころには、30余巻あったマンガ本は、トイレや寝室や茶の間やなんかに散り散りに転がっていて、食後の家族団欒の時、テレビで映画なんかやっててちょっとエロいシーンに差し掛かったりした時に、僕はいかにも興味がありませんという風に、唐突におそ松くんを読み出したりしてた。

とまあアイロンは僕のノスタルジックな部分を刺激して、色々思い出させたってわけ、というのは嘘だ。アイロン一つでそんな回想するほど暇じゃないし、遠い目になるほど疲れてもいない。アイロンは当たり前に道具として役立った、ただそれだけだ。しかしアイロンでシワを伸ばしていく時に感じた違和感だけは本当だ。

それを起点に考えるに、今、口に馴染んでいる色んな言葉も、たとえばイエローオーカーとかカーマイン、キャンバスロール、自尊心とか努力だとか、好きだとか嫌いだとか、それに誰かの名前だとか、ある日ふっとその言葉を発した時、舌が切れるような違和感に愕然としたり、切なくなったりするのかもしれない。

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新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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