外で飼う犬、内で飼う豚

最終更新: 2017/08/22

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朝起きて絵を描いていると、ふと鮮やかにどこかのフェリー乗り場を思い出す。
どこか、って言うなら鮮やかじゃないじゃないかと言われるかもしれないが僕にとってそれは間違いなく鮮やかだったので鮮やかで間違いはないのだ。
今からどこかの島へ出かけるところ。軽く肌寒い、朝靄、コンビニで買った弁当、六条麦茶、それらが詰まったリュックサック、小さく海が鳴っている。
それは、子供の頃に父が連れていってくれたどこかのフェリー乗り場の、リアルな「空気」だった。
思い出して、筆が鈍った。途端に胸が痛みはじめた。天気がよくなかったとはいえ朝っぱらから泣きそうになってしまった。しばらく、鼻先をその時の空気感がふやふよ漂っていた。ちょっと、タバコが吸いたくなった。
しかし僕も進歩したもので、単純な感傷に単純に浸り来んで単純に暗い気分になったりはしなくなった、らしい。少なくとも今朝は。
なんか、そういうのをもう一度味わいたいなと思った。しかしもはや味わわせてもらう側ではなく、味わわせる側なんだろうなとか思って、そう思うと自分の身の回りにある一切がちょっとばかばかしく感じられた。筆や絵の具はもちろん、部屋や、近所や、神奈川とかが。
まあ、そんな感傷タイムはすぐに終わった。これをこうするしかないこうするべきだ、緩いノルマを体にひたと巻きつけて、まあ、ひと安心だと。

何かしら思った方は、ちょっとひとこと、コメントを! 作者はとても喜びます。

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新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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