吹きすさぶ屁理屈

  2017/08/22

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50メートルほど先にある 向かいのマンションの通路を、新聞屋が駆けてゆく。契約している家々に新聞を投じてゆく。
きっと新聞屋には新聞屋の楽しみ、と呼べるほどのものではないが、まあそういうのがあるんだろうと思う。投函する時、ポストの口が薄く開かれた時、中からの光が漏れ出して、こいつ起きるの早えな、とかいう。
早起きの家はだいたい決まっていて、じきにその家の人が起きているのが当たり前になる。それがたまに光が漏れ出してこず、起きていないとなると、無意識的に想像を巡らしてしまう。
原付にもどって次の家に走り出しながら、今日は具合でも悪いんだろうか、とか。
いやいや、単に寝坊しているだけかもしれない、布団の中でもぞもぞと朝の気だるいまどろみを楽しんでいるだけかもしれない。
すごくどうでもいいことはわかっている。しかしつまらないことがやけに気になることもある。
次の日も起きていないようだったりすると、たまたま2日ほど遅起きな日が続いただけかもしれないのに、何故だかそれを異変のように感じる。
と、事件仕立てにしようかと思ったけどやめた。
日々にあるのは小さなことばかり。しかしそういう些細な出来事が人生の大半を占めてしまうのはきっと仕方のないことで避けられないことなんだろうから、よく言う小さな楽しみを見つけるといのは、つまるところ充実した人生への一番の近道なんだろう、byみつを。

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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