冬の暮れ方

最終更新: 2017/08/22

冬は日が暮れるのが早い。

夕方の5時くらいには、もうすっかり夜になっている。つまり暗い。

それからさらに15分もすれば真っ暗である。夏であれば、あるいはせめて春であればまだ十分に明るいだろうに、いまは冬で、あたりは難なく漆黒の闇に屈することになる。

私もまた例外ではなく従順に膝を折る。夜が来たのだ。ごはんを食べよう。酒を呑もう。とにかくはもう、仕事はおしまいにしよう。一日が終わったのだ。

それで、そのようにする。ごはんというか、つまみというか、とにかくは何かを食べながら、ぐいぐいと呑む。

やがて私はかるい酩酊を覚える。時計を見やる。まだ6時半にもなっていなかったりする。何がどうというわけではないが、小躍りしたいような、豊かな気持ちになる。まだこんな時間か、まだまだゆっくりできるぞ、何杯でもやってやろう。

そうこうするうちに、私は立派な酔っ払いになっている。時刻は9時ごろだろうか。しかしそれでも、十分にまだ早い。夜はこれからだ。とはいえ、すでに満足してしまっている感がある。これ以上だらだら呑んでもしょうがないなと思う。

寝よう。歯を磨き、床に入る。脳が、身体がしびれている。

こういう時、なぜだか妙に一生懸命いったい人生ってなんなんだろうなと考えはじめたりする。酔っ払っているし、なんら答えらしきものが出るわけでもないのだが、やけにあれこれと思考の枝葉を広げたりしてしまう。

間もなく意識が無くなり、夢を見る。そうして見る夢は、たいてい濃厚でリアルである。それはほとんど、別のもう一つの人生にさえ感じられるような。

それから一瞬のうちに朝が来る。日が昇っている。私は起きる。放っておいてもまた日が暮れる。私はまた酒を飲む。私はまた眠る。

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新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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