事実、女三人寄れば姦しい

  2017/08/22

つまり、どこにも行きたくない-F1000123.jpg

朝。向かいのホームには今から楽しい遠足と思しき子供の群。
ぐわぐわぐわぐわ、がーがーがーがー、まるでアヒルの群れのようにやかましい。いや、“アヒルの群れのように”なんて現代の我々では到底実感の湧かない比喩表現を使ってしまった。まったく、作家失格である、作家じゃないけど。
まるでパチンコ屋の前を通ったらタイミングよく自動ドアが開いたみたいに、とか言うほうが現実的な感覚に即しているかもしれない。
パチンコ屋、と言い切らないのは僕がギャンブルの類を一切やらないからで、ギャンブルは人生だけで十分だ、とかなんとか言ってみたりして、というか言わせておいてくれYO!
ひさびさ使ってしまったYO!
YO。
で、僕はなんだか不思議だと思った。
僕の立つホームにもその子供の数に負けず劣らずいやむしろそれより多くの人が居るにも関わらず、とても静かだったから。
奇妙だった。
一瞬あとには「当たり前だろバカ」と思わなくもなかったが、やっぱりそれは奇妙だった。
何が原因かと考えた。不況のことでもGMの破綻でも北朝鮮のミサイルでも親の老後のことでもなく、群集のスケールとその喧騒の比例および反比例について、を考えた。
答えはすぐに出た。あちらのホームの子どもたちは「みんな仲間」なのであった。対して僕を含むこちらのホームは「みんな他人」なのであった。
宇宙船地球号、とかいう考え方を思った。人類皆兄弟という言葉を思った。袖すり合うも他生の縁ということわざを思った。
思ってはみたものの、やっぱりこちらは静かだった。あちらはやかましかった。子供の群れにはやけに“黄色”が多かった。
目立つ色を身につけさせ安全性を向上させるためかもしれなかったが、あるいは“注意”という意味での黄色かもしれなかった。
信号機。赤黄青、で、黄色は注意。
子供はいろんな意味で危なっかしい存在だから、黄色で、注意。
対する僕らはグレーをメインとしていた。
ご存知の通り、信号にグレーはない。
さて、危険なのはどっちかな? って馬鹿やろう。

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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    2007年より開始。実体験に基づいたノンフィクション的なエッセイを執筆。アクセス数も途切れず年々微増。不定期更新。

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