乾いた指先で閉ざされた

最終更新: 2017/08/22

だいたい昨日の話をしてるような気がするけど今日もやっぱり昨日の話から始める、と言ってもそれは深夜か早朝かの3時4時あたりのことだから正確には今日の話になる、とかいう屁理屈をいうやつは女にモテないよと昔誰かに言われた気がする。誰だろ?

でまあ、とにかく僕は頑張ったわけだよ。夜を徹して。がんばるのが当たり前なんだけど、それを誰かに見てもらいたくて誇りたくて自慢したくなるというのはどういう心理だろう。まあ、誰だって多かれ少なかれそんな気持ちはあるんだろうけど、ぼくはそういう気持ちが世界中の人に配って歩いてもまだあり余るくらいに過剰にある。生まれつきだ。

二重跳びができるようになったり、足かけ回りができるようになったり、リフティングが沢山できるようになったりした時には、とにかくは母に見せていた。見せたくて仕方なかった。まあ正確には誉められたくて仕方なかったんだけど。

なんだろうな、別にマザコンで構わないけど、まあそんな色んな「できるようになったこと」を見せて、そして期待を裏切らない賛辞をもらえるのはこの上ない幸福だった気がする。世界の頂点に立ったかのような心持ちでもあった。

で、大人になって、ぼくは誰にそれを見せようかと。当たり前だがもはや親の賛辞では心満ちず、足りず、たとえ誉められたとしても嬉しさよりは微笑ましさが先に立つ。そう、もう大人だから。って、ノスタルジックでメランコリーなわけじゃなくて、ただ、その時々で体調が違うように、欲しいものも変わり、信念も変わり、愛するものも変わり、幸福も変わる。そして限りなく真っ直ぐに伸びていたはずの人生が揺らいでゆく。

その揺らぎはひどく魅力的な曲線で、ぼくは手を伸ばさずにはいられない。指でなぞってみずにはいられない。

何かしら思った方は、ちょっとひとこと、コメントを! 作者はとても喜びます。

わかりやすく投げ銭で気持ちを表明してみようという方は、天に徳を積めます!

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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