メメント・モリ

  2017/08/22

F1000562.jpg

僕のごくごく個人的な感傷とロマンから、長らく自室に置いていたじいさんの骨(一部)を墓に納めた。
墓の中というのを初めて見たけれど鍾乳洞みたいにじめっと水滴が壁に張り付いていた。
母は骨ツボを開けて墓の中にまけと言ったんだけどなんだか面倒なので壺のままにしておいた。母曰く骨を土に帰したほうがいいのだそう。
土に帰る、という感覚。
よく言う言葉だけどなんだか違和感がある。荼毘にふしてじいさんの骨がこんがりアツアツで出てきたあの日。
各々骨を箸でつまんで壺に入れてゆく。ほどなく壺は満杯になり、余ったというか入りきらなかった骨は市のほうで処理いたしますとのことだった。
土に帰すとかいう違和感は、それに似ているかもしれない。
そりゃあ儀式としては完成されていてなんの抜かりも問題もないんだろうけど、じいさんの骨の“一部”だけじいさんの遺骨として墓に入れて、あくまでもじいさんの“一部”を延々と墓参る。
ロマンチシズムに過ぎるかもしれないが、じいさんの骨をあっちこっちバラバラにしてしまったら、もともと蘇るわけはないんだけど、もっともっと完全に絶対に蘇らなくなるような気がしてしまう。
だから外国とかでは土葬が多かったりするのかもしれない。衛生上よくはないんだろうけれど、感覚としては死んだままの形で埋めてしまいたい気がする。そうしたら、なんとなく、本当になんとなくだけど、よくあるホラー映画みたいにある満月の夜に土の中から這い出してきそうな気がしなくもない。それは生きている者達にとってある種の慰めになるに違いない。
でも、その慰めはほとんど幻覚に近い慰めだから、いつまでもその人の死を認められない受け入れられないということにもなりかねない。
たぶん、土葬の文化だからこそキリストは復活するとかいう話を抵抗なく信じることができるんだろう。
燃やして灰になってしまったら、そして焼肉を食う時と大差ない単純な熱気を頬に感じながら骨を拾ってしまったら、なんだか、夢のある美しい話が作りにくい。

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

ご支援のお願い

もし当ブログになんらかの価値を感じていただけましたら、以下のいずれかの方法でご支援いただけますと幸いです。

Amazonギフト券で支援する
→送信先 info@tomonishintaku.com

Amazonほしい物リストで支援する

PayPalで支援する(手数料の関係で300円~)

     

ブログ一覧

  • ブログ「むろん、どこにも行きたくない。」

    2007年より開始。実体験に基づいたノンフィクション的なエッセイを執筆。アクセス数も途切れず年々微増。不定期更新。

  • 英語日記ブログ「Really Diary」

    2019年より開始。もともと英語の勉強のために始めたが、今ではすっかり純粋な日記。呆れるほど普通の内容なので、新宅に興味がない人は読んで一切おもしろくない。

  • 音声ブログ「まだ、死んでない。」

    2020年より開始。ロスのホームレスとのアートプロジェクトでYouTubeに動画をアップしたところ、知人にトークが面白いと言われたことをきっかけにスタート。その後、死ぬまで毎日更新することとし、コンテンツ自体を現代アートとして継続中。

前の記事
実家賛歌でも
次の記事
時間の流れかた

  関連記事

愉悦の居酒屋

2013/08/29   エッセイ, 日常

居酒屋が好きだ。 もう一度言う。居酒屋が好きだ。 最近、節約もなにもなく居酒屋に ...

髪切って本通り近くのBARに振られてお好み焼き食べてソウルオーバーに行って寝た

2012/08/05   エッセイ, 日常

昨日したことをそのままならべてみた、本日のお題。 画像の通り、ってわけでもないが ...

興味が無いから笑えない

2007/12/01   エッセイ

今日も晴れ。雨男なのに奇跡的によく晴れてる。 いつからか興味が持てなくなってしま ...

不穏な空を水平に

2008/03/31   エッセイ

周期というものがあるらしい。楽しいばかりじゃいられない、という何か古い歌謡曲のよ ...

深夜、我ひとり巻き寿司を作る

2009/04/16   エッセイ

ってことで巻き寿司を作った。 さくらでんぶに青のりに白ごはんで三色作ってストライ ...

当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載及び複製等の行為はご遠慮ください。

Unauthorized copying and replication of the contents of this site, text and images are strictly prohibited. All Rights Reserved.

Copyright © 2012-2024 Shintaku Tomoni. All Rights Reserved.