ぼくにとっての受験と画塾

最終更新: 2017/08/22

つまり、どこにも行きたくない-DVC00172.jpg

最近、ほんの気まぐれで高校三年の時に通っていた画塾のことを思い出して検索してみた。
「SEED 横川」
するとホームページが開設されていて、そのとき教えてくれていた先生は今も健在であるようだった。ブログも開設されていて、へえ、何の気もなしに教わっていた先生にも、四苦八苦、七転八倒、波瀾万丈、とにかくらいろんなことを経験して生きてきてるもんなんだなあ、と妙に感慨深く感じられた。
往々にして人を見下しがちなぼくなのだが、長く生きてりゃいろんなことがあるもんだろうし、年功序列とか、お年寄りを敬うとかっていう価値観も、それなりに意味があるんだろうな、きっと。
広島という土地にたいして思い出も愛着も感じないぼくなのだが、なんだかうれしくなってそのブログにコメントとしてみた。するとレスがあって、いくらかやり取りがあって、ARTDISFORのホームページも見ていただけたようで、“精力的に活動してますね”と言われて、活動内容の是非はさておきうれしかった。
でまあそんなこんなで高校生だったぼくが通った夏季講習の成績表が本日の画像。
なんか、ぼくとしては昨日のことのようなんだけど、“99”とか書いてあるし、とりあえず物持ちの良さを自慢したいんだけど、もう十年も前のことになるのかと考えると、妙に違和感がある。
いつの間にか画歴十年、いつの間にか十歳も歳をとってしまっている。
極度に飽きっぽいぼくがひとつのことを十年も続けられた、しかも最近はさらにアーティストになりたいという欲求が高まってきてて、是が非でも職業にしてやろうという気になってるから、きっと画歴は人生の長さと比例してゆくんだろう。
とかいうちょっとばかり気取ったニヒルな感慨のかげで、あの頃のさえないぼくが(今もさえないじゃないかなんてことを言うんじゃない!ばかもの!)顔をのぞかせる。
高校の美術部で、先生の陰謀か本音かわからないがおまえの絵はおもしろいのうと言われてちょっとした自信を携えて入った、そのシードという画塾。
が、ぼくの安い自信は秒殺であった。毎回講評会で自分の絵を並べるのが恥ずかしくてしょうがなかった。今回はうまくかけたと思っても皆の作品と並べるとその拙さは小学生が見ても明らかだった。
ひとつひとつの作品に先生が褒めたりけなしたり、というと聞こえは悪いが改善点などをコメントしてくれるのだが、ぼくの耳にそれらがちゃんと届いたことはただの一度もなかった気がする。
今回もだめだ、ヘタクソだ、むちゃくちゃ恥ずかしい、なんなんやおれのデッサンは、はいヘタクソですダメです無理してほめなくていいですスルーしてください早く帰りたいです
なんてことを毎回思っていた。僕にとっては失意の連続だった。
夏休み、朝から夕暮れまで絵を描いて、家に帰ると一人ウサ晴らしとばかりに家の前の駐車場でひたすらスケボーをこいで遊んでいた。ジャンプなどはできなかった。ただただこいで、滑っていた。30分くらいすべると、ご飯よと母が呼ぶのが常だった。時々は母を外に連れ出してきて絵ではなくスケボーうまいじゃろうと、自慢して見せた。高校生らしくもない、けそけそした人間だった。なぜだか友達と遊ぶことは滅多になく、たぶん、別の意味で心配な息子だった。黒夢とGLAYが好きだったのが、たぶん姉の頭痛の種だった。しかし妹は僕を慕ってくれていた。と言ってもそれはただ単に七ツも歳が離れていたせいで兄が同年代の若者と比してどういう存在なのかわかっていないだけだった、と思う。
毎朝、妹とNHKの教育番組を見て、やけに笑ってから、画塾へと向かった。
デッサンが嫌いだった。それで、絵も楽しくはなかった。
そう考えると、いま自分が絵を描いてるのが不思議になる。あの画塾に通っていた大半の人は、十年たっていま、何人の人が続けているだろう。
僕よりもよほど優秀な人が何人もいた。いや、僕よりヘタクソな奴は居なかったと言っても過言ではない。
そんなぼくが、まがりなりにも続けている。
人は、仰々しい決意とともにことを初めるのに、呆れるほど簡単にやめてしまう、やめてしまえる。
パラドックス、そんな劣等感もなくもっと上手かったとしたら、とっくの昔にやめてしまっていたかもしれない。
死んでしまうその瞬間までは、人生はきっと長い。
もう十年、絵で人生のひまを潰してみよう、か。

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新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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