すべき朝に塗りつける赤

最終更新: 2017/08/22

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9時28分に起きた。目覚ましは9時30にかけていた。15分刻みで5、6回かけていた目覚ましをすべてオフにして、何を食べようか、2、3分かんがえてガバと起き出す。
ニュースを読む。累計、イラクでの米兵死者は4万人、イラク人死者は9万人とも言われているらしい。短い、とても短いたった数行のニュースに13万の命が、何か突然ポストにチラシなり何なりがガタがたッと投じられたような、不穏な気配を感じる。不穏だが、実体をつかめない。今この瞬間も誰かが不本意で不条理な死を迎えていたりするんだろう。
僕はのんきに、数日前の夢をブログに書こうかななんて思って携帯を開いてボチボチやり始めたとこだ。
自宅に女を連れ込んでいた。女はシャワーを浴びていた。僕は布団の上でぼうと出てくるのを待っていた。
しかし、いつまで経っても出てこない。温泉でもなんでもなく、シャワーを浴びるだけだろうに、だ。
一時間近く経ったろうか。僕は待ちきれなくなったのではなく単に不審に思って、「まだ?」とか言いながらバスルームの前に立った。
僕がドアノブに手をかける前から、そのドアは薄く開いていた。にわかに不審感がふくらんで、僕は勢いよく引き開けた。
開かれて現れた光景に、僕は言葉を失った。
女は、子供の頭を洗っていた。小学4、5年くらいだった。しかも4人も居た。女や子供がいっせいに僕を見上げた。みな一様に奇妙に楽しげだった。
僕は何か言おうとして、しかし女が先に口を開いた。「家がないんよぉ、もちろんに風呂もぉ、こういう時にしっかり入っておかないとぉ」
お、おま、おま。
狭い狭いユニットバス。ぎゅうぎゅうの中で女は子どもたちの体を洗い続ける。いつの間にか、そいつの夫らしきイカツイ男も混じっていた。総勢六人。
か、か、帰ってください ぃ
男は即座にドスの聞いた声で言った。「わしの女と寝ようとしとったろうが」
がはは、と笑ったかもしれない。僕はアングルの絵のトルコ風呂の生臭い版みたいなその光景に、ただただ絶句していた。子供たちは異様なほど気持ちよさげに泡まみれになっていた。

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新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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