美術家 新宅睦仁のブログ。ほぼエッセイ、ときどき現代の美術とアート。

アートは誰のお金でやればいいのか

    2019/10/17

天皇の写真を燃やすなど、スキャンダラスな展示への抗議から騒動続きとなった「あいちトリエンナーレ2019」が、今月14日閉幕した。

その中でしばしば聞かれたのが、アートは「公金でなく私費でやれ」という論調である。

さらに決定していた文化庁からの助成金7800万円が交付されない方針となったことで、議論は紛糾した。アーティスト側が猛抗議する一方、世間はこの決定を当然とした。

「国家による検閲を許すな」と叫ぶアーティストに、「社会の役に立たないことに血税を使うな」と、世間は怒りをあらわにした。

私はアーティストという立場上、前者に与するべきだと思ったが、おいそれとは同意できなかった。というのも、公金というものの使い道は、本来流動的であって、たとえば社会福祉に使われるはずだったのが戦闘機の購入に当てられたり、激甚災害が発生すれば急遽そちらに回さねばならなかったりするからだ。

そのため、今回の世間の反応からすると、いわゆる民意、その総意として不交付は妥当のように思われる。特に以下の三潴氏の発言を見るにつけ、私はそう結論を出すに至った。

三潴末雄(@mizumaart) 『普段から展覧会を余り観に行かない政党党首同士が、愛知トリエンナーレ問題を国会の代表質問でやり取りする光景は三流劇以下だった。「文化を殺している」のは、補助金を出さない文化庁ではなくて、文化やアート活動を公的補助金がなければ果たせないと主張する、インチキ文化人や出来損ないの作家だ』 2019年10月11日 2:52 AM ツイート

引用元:https://twitter.com/mizumaart/status/1182594861372887040?s=20

そもそもアーティストなんてヤクザな商売である。今でこそ現代アートを含め芸能の世界は華々しいが、かつては河原乞食と呼ばれ見下されていた。その変遷を、歌舞伎役者の中村勘三郎氏は感慨を込めてこう語っている。

河原乞食といわれていたところから、やっとの思いで天皇陛下の前で演れるまでにした (中略) 江戸時代は役者の身分なんて、士農工商より下ですよ。 (中略) 西洋文明が入ってから盛んになった演劇界運動に新劇と一緒になって乗っかって、芸術という風なものにまでなってさ。 (中略) えたひにんのように言われていた者が、天皇陛下の観ている前で『勧進帳』やったなんて、眠れなかったと思うよ。

引用元:私家版 差別語辞典(新潮選書)上原 善広

それは昔で、今は違うという人もあろう。だが、出自や来歴は未来永劫消えることはない。むしろそこに本質がある。

「ふつう」に考えてみてほしい。ほとんどすべての人が鋤や鍬を持って畑を耕していた時分に、笑わせたり泣かせたりでメシを食うような輩をどう思ったろうか。重労働の日々の中、あいつらだけおもしろおかしく稼いでけしからんと思うのは自然な感情ではないだろうか。

今でも芸能人の稼ぎに対して反感を持つ人は少なくない。もっとも、現代では感情はあからさまに表明されるので、180度転回して、自分もあちら側に行きたい、それでYouTuberが将来の夢になったりする。

確かに文化は大切だ。海外における状況を鑑みても、文化をないがしろにすることは国際的に先進国からの失墜も意味しよう。だが、まっとうに働いて生計を立てている世間様からすれば、我々アーティストがやっていることは本当にヤクザな商売以外の何ものでもないのだ。

それこそ江戸時代の歌舞伎と一緒で、世間は愉快がっている内こそ金を出すが、飽きれば捨てられ一文無し。文字通り河原乞食と成り果てる。

もちろん私とて、もらえるはずだったものがもらえなくなるという状況に腹が立たないわけではない。しかしヤクザな我々は、武士は食わねど高楊枝よろしく、ひょうひょうとして世間の裏をかき、またどこかから金を巻き上げればいいだけではないか。

ヤクザ者にはヤクザ者のやり方がある。天皇もフクシマもクソくらえとばかりにやってのける我々だ。今に見てろ。生き変わり、死に変わり、 恨みはらさでおくべきか。

新宅 睦仁

広島→福岡→東京→シンガポール→現在ロサンゼルス在住の現代美術家。美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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