バカなんじゃないかと思う

たまに、こいつバカなんじゃないかと思うことがある。

それは彼や彼女の振る舞いだったり発言だったり、あるいはそもそもの存在だったりする。

他人をバカだとかアホだとかカスだとか死ねだとか生きる価値ない消えろクズだとか、そのように断定するのは傲慢で蒙昧だという向きもあろう。

しかし、この世には真実、絶対に、天地神明に誓ってこいつはバカなんだということがあるのであって、そんな時にわざわざ己を省みる必要など毛頭ない。そいつは本当に冗談抜きで見事なまでにバカだからである。

とはいえ、はっきりさせておかなければならないのは、バカに罪はないということだ。バカであることは、いわばDNAのようなものであって、本人の意志や努力でなんとかなるものではない。それはただひたすら純粋にバカなのだ。それ以上でも以下でもない。

断っておくが、私は一切の差別を否定する者である。レイシズムなど論外だ。すべての人間は生まれたままの、ありのままですでに完成されている、そしてなにより美しい。そこで白い肌を求めて整形を繰り返したマイケル・ジャクソンなんかはあまりにも悲しい。それはバカが頑張ってバカでなくなろうとしたに等しい。天に唾するとはこのことだ。

バカなのに。バカはどこまでいってもバカなのに。自分以外の何者かになろうとする行為は、一切が虚しい。

黒人だろうが白人だろうが黄色人種だろうが、それはただの生物学的事実に過ぎない。優劣も上下もない。空は青く、海は深く、風は吹く。そういう、あまりにも自然で、ニュートラルなことだ。

バカと出会い、バカと気づき、バカと思う。いいも悪いもない。あまりにもナチュラルな当然の認識でしかない。

つい昨日も、こいつバカなんじゃないかと思った。それはもう、バカで、バカで、360度どこから見てもまごうことなきバカなんだ。いやあ、これまた立派なバカ、素晴らしきバカ、頭が下がるバカだなあと。

そういう時って、なんというか、こう、雄大な自然を眺めるような癒やしがあって、いうなれば世知辛い世間のオアシス、思わずほっこりしてしまう。

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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