やつの癖は指パッチン(不快な人の癖のあれこれ)

最終更新: 2016/04/16

無くて七癖という。口癖や姿勢などの他愛ない癖ならともかく、実害を及ぼす癖も少なくない。

貧乏ゆすり、くちゃくちゃという咀嚼音、机を指先でカツカツ叩く、等々。あの不快さはいったいなんなのだろうか。無視して放っておけばいいのだろうが、しかしいったん気になり始めるや、自分でも信じられないほどの苛立ちを覚えてしまう。

過去に、貧乏ゆすりをする同僚がいた。たまにではない。一日中である。まるで泳いでいなければ死んでしまうマグロのように、朝から晩まで貧乏ゆすりをしているのである。視界の端で、ちらちらといつも小刻みに揺れている。嫌でも目に入る。その鬱陶しさは日毎に膨らみ、ほとんど殺意にまで発展した。それで私は、猛然と貧乏ゆすりをやめていただけるよう丁重なメールを作成して、しかし送信する踏ん切りがつかずにいるうちにその同僚は退職してしまった。

同様に、机を指先でカツカツ叩く人も居た。あの時は真横であり心底我慢ならなくなり、「その机を叩くのやめていただけますか」と申し入れた。言われた相手もストレスだろうが、しかしこちらはそれを言い出すまでに死ぬほどのストレスを受けているのである。

ところで最近、新たなる大物が登場した。〈人間の癖界〉のトップスターの座を狙える逸材である。出没場所は都内某所、年のころは立派な大人、そして名前は仮にPと呼ぶことにしたい。プロデューサーとか、そういうPではない。指パッチンの神様、ポール牧のPである。しかし、こと平成生まれのうら若き読者にはなんのイメージも浮かばないであろうから、その場合は柿ピーのP、あるいはポムポムプリンのPだとでも思ってもらえれば結構である。

さて、Pはよく歩き回る。そして折に触れて、パチンパチンと指パッチンをやる。ちなみに英語では「フィンガースナップ」というらしい。それはともかく、出社してパチン。コピーを取ってパチン。電話をしてパチン。トイレに行ってパチン。話してパチン。笑ってパチン。

最初、私は冗談抜きで〈空耳〉だと思った。まさかこの時この場所で〈指パッチン〉をやる大人がいるとは思えなかったからだ。少なくとも、小学校や中学校ではないのである。しかし、それはまったくのリアルであった。

そしてさらに悪いことには、Pは指パッチンが〈うまい〉。ここで巧拙を論じる必要など微塵もないのだが、指パッチンについてだけを純粋に述べれば、確かにいい音を鳴らしている。あるいはポール牧といい勝負かもしれない。しかし、指パッチンがいくらうまかろうと、たとえ指パッチンの世界大会の優勝者であったとしても、TPOをわきまえない指パッチンは不快音であり迷惑でしかない。

即刻、その指パッチンをやめていただきたい。笑いごとではない。毎日毎日指パッチンを聞かされる身にもなってほしい。ポール牧の指パッチンはれっきとした芸でありおもしろくもあったが、Pのそれは全然おもしろくない。ひたすらに不愉快千万な指パッチンなのである。助けてほしい。本当に、私は悩んでいる。

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新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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