疲労の色の、いろいろ

  2017/08/22

疲労の色が見えるとか、濃いとか、隠せないとか、言う。

今日、「お疲れなんじゃないですか?」と言われた。立場上からして決して心安くない人からの言葉だったので、よほどのことであろう。そう、言われるまでもなく、確かに私は疲れている。

しかしそれは、実際のところ疲労というよりも苛立ちである。生きていて、ばかばかしいことをやらされるほど疲れるものはない。だから私は疲れている。

とはいえ、誰に文句を言うわけでもないし、そもそも言える立場でもないので、心の中で中指を天高く突き上げる、あるいは親指を地中深く突き刺すだけである。それが社会人というものである。

近い将来、私はここを去る。そう決めてから、一段と苛立ちが強くなった。未来などないのだから、うまくやる理由は何もない。残りの期間を、ただ黙々とやり過ごすだけである。

旅の恥はかき捨てというのと似ている。誰かと二年、三年と付き合わねばならないからこそ、人はそりの合わない人ともうまくやろうと立ち振る舞う。もう二度と会わないとなれば、そんな気持ちはたちまち瓦解する。

仕事での人間関係なんてのはそんなもので、利害関係が取っ払われれば、あっけなく離散してちりぢりになる。往々にして仕事人間の老後がさびしいのは、その金や地位で繋がっていた関係性を、真の関係だと思い込んで生きてきたせいである。

仕事とは嫌なものである。いや、正確には賃労働、いわゆるLaborほど嫌なものはない。金のための労働は、人生の切り売りでしかない。まったくそれは字義通り切り売りであって、そうして己が擦り切れてゆくのは道理である。

35歳、人生も折り返す、これからの課題。いかにLaborを減らしてWorkを増やしてしていくか。世の中、春を売るばかりを身売りと言うのではない。

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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