重ね合わせて結婚式
2017/08/22
いろいろ書くことがある気がする。なぜならいろいろ思ったから。
友達の結婚式は、それはもう素晴らしいものだった。素晴らしい、というか愛おしくなるような空間と時間だった。
で、ぼくはだいたいよく泣くんだけど、やっぱり泣いた。
新郎新婦が並んで立っているだけで、つまり最初っから泣きそうになっていた。
これから助け合ってとか、素晴らしい家庭を築きますとか、お父さんお母さん今までありがとうとか、そういうお決まりの言葉って、よくよく考えたらおまえわざわざ今言わんでも前の日とかに母ちゃんが夕食作りよる隣とかで静かにゆっくり伝えた方がよほどいいだろ、とか思うんだけど、なんだろ、僕はあの茶番劇をとても良いものだと思う。
新郎や新婦は席の温まる暇もなく入場と退場を繰り返す。
要所要所で盛大な拍手。
間断なくまたたくフラッシュ、写メ、歓声。
これもよくよく考えれば見てくれはどうでんいいけんがゆっくり座っとけよという感じなのだが、あの馬鹿馬鹿しいような段取りは、どうして、僕は死ぬまでに一度は経験してみたい。
結婚式なんかくだらねえといえばそれまでだし、結婚式よりも、その先も淡々と、すぐに飽きてしまいそうに淡々と続いてゆく日々の生活の方がよほど重要で、結婚式なんかやんなくたってバッチリ生活できてればそれでいいような気もするんだけど、あの結婚式という、ある種“余計な”儀式には、出産とか葬式にも匹敵するほど、人に何かしらの深い感慨を与えてくれる。
でまあウンチクを垂れればきりがないんだけど、生まれて初めての朝帰りとか無人市でみかん泥棒したこととか僕が女の子に振られて泣きながら電話したらいつもはクソふざけたような言動ばかりなのにクソ真面目に励ましてくれたこととか僕をバンドのメンバーに入れてくれてライブなんてことまで経験させてくれたこととか、そういう思い出のある彼に、僕はいつかはさっぱりわからないが未来の僕を重ね合わせて、上等な生地の固いナフキンで目頭を押さえ続けるのであった。
広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。
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