言葉で全て埋まるなら、あらゆる辞書を投げ込んで
2017/08/22
ラーメン屋のくせにラーメンがまずい。だから僕らは野菜炒めを食べた。
ここのラーメンがまずい、というのは僕が教えてあげた。だから僕らは一つの野菜炒めと、餃子を二皿、そして大盛りのご飯二つを注文した。で、1300円。
何かを分け合って食う、ってのはすごくいい。ちなみに僕の実家は七人家族だったから、いつも料理は大皿で出てきて、父、母、姉、妹、祖父、祖母、が、みんなでつついて食べていた。だけどその昔僕は、友達の家で見た、各自のお皿があって、きれいに盛ってあって、個々人でそれを食べる、というのが、すごく羨ましかったものだ。もしかするともしかするけれど、その大皿で各自マイセルフ好きなだけ取って食べて的環境は、僕の人格形成になんらかの影響を及ぼしているのかもしれない。
それでまあ、もはや秋とは呼べず、冬としか思えない。そんな寒空の下、そぞろ歩き。気取らない言葉、完全に自然な言葉を交わしながら、とろとろと歩いてゆく。時にはじけるように上がる笑い声は、冬のとがった空気を柔らかく溶かしてあたたかい。
昨日が思い出になり、今日は思い出になろうしている。この瞬間も、思い出が膨張し続けてゆく。また老いてゆく。何もかもどうでもいいさなんてよく言うけれど、何もかもをどうでもよくできない現実の前で、それはただ願望でしかない。
ああ、久々さけびたいなあ。カラオケでいい。声が出なくなるまで、叫びたいなあ。それでまあ、苛立ちをできるだけ吐き出して、脱力して、ぼうっとして、明日のことを考えて、気付けば朝になってて。
広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。
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