習慣が僕らの性癖を作ったのだ
2017/08/22
今日はまだ一度も外に出ていない。カーテンすら開いていない。それで、光は蛍光灯と白熱灯しか、まだ見ていない。そして今日は日が沈んで夜になるまで家から出ないだろうから、僕にとっての今日は、太陽が昇らなかった日ということになる。
昨日ふっと思ったことがある。キャンバスに棟方志功ばりに顔を近づけて絵を書いている時、「あ、おれ絵描いてる」と、なんか、違和感というか、不思議というか、自分の足下がおぼつかないような、妙な感覚が突然に降ってきた。まあ、おれは一体何やってんだろう、とかいうような感覚かもしれない。
だからって別に不安を感じたりしたわけじゃないけど、何がどうなって今こうなっているんだろうと。過去から現在への繋がりが、曖昧な感じだ。たとえばファミコンとか、ゲームの世界が全てだった日があったのに、今じゃなんの興味も持てなくて、むしろゲームをするような人間を見下すようになってたり。
ビックリマンシールなんかは、なんだったんだろう。あの、お宝感覚。まさに、あれは僕にとって宝物だった。たぶんあの頃に核シェルターというものがあったなら、僕は間違いなくビックリマンシールだけをしっかり保管して、僕は地上で核シェルターの門番でもしていたと思う。要するに、自分よりもビックリマンシールの方が大事だった、そんな気がする。
今は、自分より大事なものは無い。人でも、モノでも、自分以上のモノが何もない。見つけられる気もしない。そうして自分を一番にしてしまうと、自分以外の全てが二番以下になってしまうのは必然で、以前、その事実に気付いた時、なんだかおれって寂しい人間だなあ、とか思った。けど、今は別にそんなことはどうでもいい気がする。
そう結論を出しつつも、時々は、あのビックリマンシールのような何かが欲しいなあと思う。いや、嘘をついてしまった。今までそんなことを思ったことはなくて、今、そういうものが欲しいなあと思う。とりあえずは、今の僕にとってのビックリマンシールは、モノではなく誰か、ヒトであって欲しいなと思う。
広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。
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