空気を精読しようとする人々は
最終更新: 2017/08/22
予定がフイになるのはあまり気分のいいものではない。特に自分の立てた計画に忠実に動こうとする僕にとって、それはしばしば脱力や怠惰につながってしまう。
頭と喉がアルコールを待ちわびている。僕はその欲求を満たしてやろうとひとり居酒屋に向かう。明日は忘年会らしい、が、今日は今日だ。
カバンの中には晴れ舞台を夢見るカーマインのジェッソが押し込められている。胸の内には甘ったるい楽しげな感傷がにわかに勢いづいている。そして電車を降りる。ぶると身を縮めるのも悪くないと、とてもサマにならない自嘲的な笑みを浮かべる。だんだん楽しくなってくる。
閑話休題。たとえば、ある作品を一年かけて作りあげる。テーマは失恋だとする。
最初の1月くらいは泣きながらの制作で、実に情感にあふれている、ように感じられる。しかしいつしか泣けなくなって、悲しさ辛さはただの思い出になって、そしてすっかり元気になる。
そして完成した作品に、ためらいなく「悲哀」とか「無常」とかつけれる人は、そうだな、芸術家に向いているといえる。

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。
- 前の記事
- 2017/08/22 更新 脳のひだを指でなぞるような
- 次の記事
- 2017/08/22 更新 爪先立って見えるもの
出版社・編集者の皆様へ──商業出版のパートナーを探しています
*本ブログの連載記事「アメリカでホームレスとアートかハンバーガー」は、商業出版を前提に書き下ろしたものです。現在、出版してくださる出版社様を募集しております。ご興味をお持ちの方は、info@tomonishintaku.com までお気軽にご連絡ください。ブログ一覧
-
ブログ「むろん、どこにも行きたくない。」
2007年より開始。実体験に基づくノンフィクション的なエッセイを執筆。不定期更新。
-
英語日記ブログ「Really Diary」
2019年より開始。英語の純粋な日記。呆れるほど普通なので、新宅に興味がない人は読む必要なし。
-
音声ブログ「まだ、死んでない。」
2020年より開始。日々の出来事や、思ったこと感じたことを台本・編集なしで吐露。毎日更新。
何かしら思った方は、ちょっとひとこと、コメントを! 作者はとても喜びます。
わかりやすく投げ銭で気持ちを表明してみようという方は、天に徳を積めます!