名誉よりも金よりも、
2017/08/22
昨日は、樋口の母ちゃんと樋口の弟と樋口とキンジって大学時代からの親友とおれの5人で樋口ん家(9畳ワンルーム)で、樋口母の作った家庭料理をみんなで食べた。
そのご飯のうまさときたら、メニューや味付けをだらだらと書き連ねる必要もないくらい、とにかくうまかった。
でまあ思ったこと感じたことは色々あったんだけど、全部ひっくるめて僕は一人泣きそうになってしまっていた。
僕は樋口ん家にはもう何度となく遊びにいったことがあるんだけど、昨日樋口ん家に流れていた空気は、今までとはまったく異質なものだった。
台所に樋口の母が立ってあれこれと甲斐甲斐しく料理する樋口の部屋。食欲をそそる匂いがみんなの鼻先をくすぐり続ける。窓ガラスには結露が濃く敷き詰められて、せちがらいような外界につかの間、蓋をするかのようだった。
一人暮らし用に違いないサイズで、しっかり散らかっている雑多な空間が、なぜだかあるひとつの家庭のように感じられた。しかもかなり幸福な家庭だ。何度か行ったことのある樋口の実家のような錯覚さえ覚えた。
意外に、ノスタルジーとか呼ばれるものに、場所ってのはあんまり関係ないんじゃないか。そこに流れる空気ってのは、ただその人によって作られているんじゃないか。たとえば家族全員で引っ越したりするのなら、世界中どこへ行ったって同じ空気が流れて同じ気持ちで過ごせるんじゃないだろうか。
広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。
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