人はなぜ怒り、憎み、苦しむのか
2017/08/22
はい、またしても絵の話ではありません。そしてタイトルが重すぎてかったるくてすみません。
というのも、おとといくらいから平成元年くらいに綾瀬(小田急で直通もある!)あたりでおきた女子高生コンクリート詰め殺人事件のことが頭から離れないのである。
前から知ってたような気がしなくもないけど、色々しらべてみたらこれ以上の残酷な殺され方はないというような事件なのだ。
たとえば、コンクリート詰めの遺体が発見された時、女子高生の性器にはオロナミンCのビンが二本ささっていたという。
それだけでもう、どれだけのことをされたかは推して知るべしであろう。
まあ詳しくは各々かってに調べてみればいいと思うけど、とにかくは僕はそのことばかりを考えてはや三日、くらい、たぶん。
なんで人はそんなことができてしまうんだろうと、あまりにもべたすぎる至極非生産的な問いばかりを繰り返してしまう。そしてまた、僕が彼女の親だったらどうするだろう、と。
即答で犯人らを是が非でも殺す、という結論に至る。たぶんまあ、だいたいの人はそうする、もしくはそうしたいと心底思うだろう。
でも、そこでよくいう報復の連鎖なんてことを考える。やり返して、それで誰が幸せになるというのだろう。
冷静に考えれば、その仏教っぽいガンジーっぽい発想に、確かに、と思い、また、許す心の尊さみたいなことも素直に理解し受け入れられるだろう。
しかしそれはあくまでも冷静な時であって、もっと言えば人ごとで第三者的立場の時にだけそう思えるのであって、きっと当事者であれば迷わずあらゆる鈍器あらゆる刃物をかき集めて殺しに行ってしまうんだろうと思う。
そこで許せる人は、たぶんガンジーとか、まあ仏陀とか、超人偉人であって、俗人はよくよく我を忘れるに違いない。
デビッド・フィンチャー監督の「セブン」のラストで、ブラッド・ピットの妻が殺されその首が届く場面がある。犯人は目の前に居て、丸腰である。しかしそこで犯人を殺してしまったら犯人の思うツボで計画通りにしかならない、だからモーガン・フリーマンはブラッド・ピットに殺すなと止める。ブラッド・ピットは苦悩し逡巡した挙げ句、しかし犯人を撃ち抜き殺してしまう。
見た人しかわかりそうもない説明だけど、とにかくは人間ってたぶん、そうしてしまうんだろうと思う。
許すという発想を持っていながらも、実際に当事者になった日にはそんな発想は吹き飛び、怒りに身を貫かれ、憎しみへと突き進んでゆく。
教養と実地とでもいえばいいだろうか。言うは易し為すは難しということだろうか。理性は結局、怒りの衝動の前に無力でしかないのだろうか。
コンクリート詰めほどのことでないにしろ、大なり小なり怒りや苛立ちはそこここに渦巻いていることだろう。
許す心は許せる気持ちは立派だ、素晴らしい、ほとんどの人がそう思うだろうし思っているだろう。
それなのに、人はまた今日も怒り、怒鳴り、いさかいを起こし、果ては殺し殺され血の気が引く。
それもまた人間の本性として仕方がないのかもしれない。しかし、少なくとも平時だけでも、ほんのわずかでも立派ではありたいと願うのもまた、人間の本性だろうと思う。
この果てなき複雑系、人間、大好き。
広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。
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