ぶってない、ひとりも悪くない
2017/08/22
今晩は一人で飲みに行く。
今まで店先を何度も通り過ぎ、何度も怪しいけど入ってみたいと思っていた店に。
で、入ってすぐ、ああ、串んぼうみたい、と一人しげしげとインテリアに見入る。インテリアとはとても呼べないようなしみったれた店内なんだけども。
でまあ、今日食べたものとしては、ビール大ビン一本、いいちこ水割り一杯、とりもつ煮込み、焼き鳥五本、冷や奴、で2020円。
ああ、悪くないよ。初め値札を見て馬鹿じゃねえのその値段と思っていた焼酎ボトル3500円はなんと1.8リットルボトルのお値段。ああ、いいよここ。今度絶対に樋口を連れてこようと胸に誓う。
で、何より楽しかったのは、初め店内に居た客もはけて、そこのおっさんと二人きりになってぼそりぼそりと喋ったこと。おれはいつもの通り、「いま一番欲しいものはなんですか」なんて聞いたりしたんだけど、ああ、おれ、こんな優しい穏やかな気持ちになれるんだ、まだ、大丈夫だ、まだ大丈夫だ、こんな棺桶に片足突っ込んでるようなおっさんと喋ってんのに、と。おれにはまだ、こういう気持ちはちゃんと残ってるんだと、しみじみ思えてうれしかった。
それは別に酔っ払ったからじゃなく、だって現に今これから絵を描こうとしてるわけだし、で、ただ、そのおっさんと二人で喋っている空間は、なんというか、僕にとってとてつもなく素晴らしい時間だった。間違いなく、僕はその時間の部分部分で、自分の生活や日常をすっかり忘れてしまっていた。
ああ、必ずまた行こう。というか、あんな店があるなら、僕はひとり凹んでしみったれて帰る夜も、死んだりせずにちゃんと生きていけるだろうな、なんて思ったりして。とにもかくにも僕は、あの店の常連になるだろうと思う。
広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。
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