フィーリングというオカルト(オンライン英会話に思うこと)

  2016/07/22

オンライン英会話を始めて半月あまりが経つ。始めた理由は「目指せ海外進出」、これに尽きる。

先立ってスクール型の英会話教室も検討したが、費用や内容を考えると、圧倒的にオンライン英会話に分があった。何より、「毎日受講できる」というのは大きい。

インターネットを介して、フィリピンやセルビア、ジャマイカ等々の講師に英語を教わる。それを毎日25分。今まで外人と口をきくなど、年に1度あるかないかだったことを考えると、日常そのものが変化したようにさえ感じられる。

とはいえ、英会話マスターへの道のりはあまりにも遠い。正直、何を言っているのかさっぱりわからない。講師の話に対する理解度はおおむね1割を切る。

必死に理解しようと頭を絞り、しかしそれでもわからない。脂汗をかきながら、かつて世界の人々は共通の言語を話していたのにと、ほぞを噛む。すべてはバベルの塔のせいである。人間が調子づいて天まで届けとばかりに建造したものだから、果たして神の怒りに触れた。そして人々は言語をバラバラにされたのである。

むろん神話だが、言葉の壁はかくも高いものかと、日々痛感している次第である。しかしその一方、〈フィーリング〉というものの存在もまた強く感じているのである。それはどうやら言葉以上にコミュニケーションに影響を及ぼすものらしい。

自身の英語力に変わりはないのに、どうしてフィーリングが合う講師の話は自ずと意味がつかめてしまうのである。逆に合わない講師とは、どんなにゆっくり発音をしてもらっても、なぜだかさっぱりわからない。

好悪と言ってしまえばそれまでである。美醜や愛想、快活かどうかも関係があろう。しかしフィーリングとは、それを越えた目に見えない何かなのではないだろうか。

かつて〈エーテル〉という、光が伝播するために宇宙空間に満ちていると考えられた物質があった。結局そんなものはなかったが、こと人知の及ばない事柄は未だ夥しいことを考えれば、フィーリングという何かしらが、時空を超えて相互に影響を及ぼしていないとは誰も言えないはずである。

とはいえ現代、このような考えを真剣に主張すれば〈オカルト〉の謗りは免れないだろう。しかしこと恋愛においては、この非科学的なフィーリングなるものが大いに幅を利かせているのは興味深い事実ではないだろうか。

そうして恋愛が男女を結び、子に孫にと連なり人類が存続していることを考えれば、我々はフィーリングの申し子と言っても過言ではない。言葉には限界がある。なぜならそれは理屈でしかないからだ。最後の最後でものを言うのはフィーリング、つまり〈なんとなく〉でしかないのである。

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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