ありもしない誰かのための不幸せ(日本人の幸福って何なの?)

  2020/08/25

「日本人の幸福って何なの?」と題された、ベトナム人留学生の新聞投稿について思うところがあり筆を執った。まずは以下、ご一読いただきたい。

『日本人の幸福って何なの?』
留学生グエン・テイ・トゥイ(千葉県21歳)

私は日本に来るまで、日本は立派で偉大な国だと思っていた。
来日当初も、街の発展ぶりや人々の生活の豊かさを見て、私の国ベトナムとの差は大きいと感じた。
きっと日本人は自分の国に誇りを持ち、幸せだと感じているのだろうと思っていた。
しかし、来日から10カ月が過ぎた今、実はそうではないように感じる。
日本は、世界でも自殺率が高い国の一つだという。
電車の中では、睡眠不足で疲れた顔をよく見る。日本人はあまり笑っていないし、いつも何か心配事があるような顔をしている。
日本人は勤勉で、一生懸命働いて今の日本を建設した。でも、会社や組織への貢献ばかり考え、自分の成果を自分が享受することを忘れていると思う。
ベトナムはまだ貧乏な国だが、困難でも楽観的に暮らし、めったに自殺を考えない。
経済的豊かさは幸福につながるとは限らない。日本人は何のために頑張っているのか。幸福とは何なのか。
日本人自身で答えを探した方がいいと思う。
【引用元】「日本人の幸福って何なの?」ベトナム人留学生の新聞への寄稿が話題にhttp://temita.jp/twitter/34520

まあ、その通りだと思う。が、私の場合は例外かもしれない。好きなことを好きなようにやって生きていて、別に滅私奉公ですり切れて不幸せというわけでもない。単に、足ることを知らぬ無いものねだりの性質ゆえに、常に不満を抱えているに過ぎない。

幸せとは何かと言い出すときりがないが、日本人の場合は明らかな原因がある。過度な空気読みである。

日本人は長く農村共同体の中で生きてきたから、周囲との和は死活問題であったことはわかる。ひとたび仲違いすれば、農作を手伝ってもらえない、田に水を引いてくれない、果ては村八分にならないとも限らない。

そこで空気読み、すなわち「周囲に合わせる」ことは立派な生きる知恵であった。しかし、それがいびつに増長しているのが現代日本なのではないだろうか。

私は言いたい。周囲の目を気にするのは即刻やめるべきだ。無能と思われようが、付き合いが悪いやつだと思われようが、どうでもいいのである。上司と昼休憩まで連れ立って、くそ面白くもない仕事の話をしながらメシなんか食わなくていいのである。顔も知らない他部署の誰かの異動にカンパなんてしなくていいのである。

あなたがしている日々の嫌な思いで、誰かが心底救われて喜んでいるというのならばまだわかる。しかし誰も喜んでなんかいない。あなたとの話も過ごした時間もほとんど覚えてなんかいない。協調こそ全てなのだという誰も幸せにならない規範を、お互いに強制し合っているだけである。

恐れずそこからいち抜けるのである。他の誰でもなく、まずあなたがいち抜けなければ始まらないのである。そうすれば、必ず誰かが救われるのである。

後輩の面倒を見なければと毎日ランチに誘っているが、それは双方にとって単なる負担ではないか? 仕事が終わらないからと毎日残業しているが、それは本当に今日中にしなければならないことなのか? 部下や同僚を、単に残業に巻き込んでいるだけではないのか? 堂々と「明日やります」と言えばそれで済むことではないのか?

自分を押し殺して、誰かのためにがんばる。それはそれで結構である。しかし、その誰かは、いったいどこに、どれだけいるのか? そして、どれくらい喜んでくれるのか? ――それを考えれば、いま自分がすべきことは自ずと見えてくるはずである。

まず、是が非でも自分が満足して、笑わなければならない。人のことを考えるのはその後で十分である。人生は短い。たとえ一秒でも、好きでもない奴らにくれてやる時間はないのである。

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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