いざ立ってみると、何もない。(夢や目標は現実になると色あせてつまらないことを知る)
数年前に渇望していた目標は、先年軒並み現実のものとなった。たとえば、公募展での受賞や個展の開催である。
かつて私は、大枚はたいてでも個展をしたく、実際そのようにやっていた。それが去年今年と展示が続いているが、すべて私の負担はない。
これはまったく驚くべきことであって、かつての私を思えばこそ狂喜して乱舞してしかるべきであるのに、それがない。
最近またひとつ吉報があって、とある有力サイトにお声がけいただいた。私の作品を取り扱いたいのだという。いつか私はそのサイトにお金を払ってでも関わりたく、どうするか真剣に悩んでいた。そのことを思えばこそ、もっと喜べと、私は思う。
しかしそのあるべき感激がない。喜びがない。我が神経を怪しむほど、何の感慨もない。
いま私が立つ場所は、往年の私からすれば山の頂にも等しい。卑下も謙遜も必要なく、私はやった、がんばった。そう思って誇って誰に迷惑のかかるでもないのに、私は相も変わらず不満である。
それならどこまで行ったら満足か。何がどうなったら幸せか。たぶん何がどうなっても、芥川賞を取っても紫綬褒章をもらっても、あるいはノーベル賞にあずかってもやはり満ち足りないのである。
何を小癪な、そのような雲の上のことがわかるはずがないと嗤われるかもしれないが、そのくらいの想像力は誰にもあるのである。
たとえばあなたの結婚が芸能人の某、ハリウッドスターの某だったとしても、その喜びの甲斐ないこと、たかが知れている。せいぜいが今の妻、今の夫の延長線上であって、いっそ同じである。
つまるところ、すでに私はすべての喜びを知り、経験し、そしてあとはその大小とバリエーションに甘んじるしかないのではないか。
それは予感などというものではなく、絶対的な真理だと諦めてもいるが、しかし、とにもかくにもそこに向かうしかない。これといって他にすることはないのだから。
広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。
ご支援のお願い
もし当ブログになんらかの価値を感じていただけましたら、以下のいずれかの方法でご支援いただけますと幸いです。
Amazonギフト券で支援する
→送信先 info@tomonishintaku.com
ブログ一覧
-
ブログ「むろん、どこにも行きたくない。」
2007年より開始。実体験に基づいたノンフィクション的なエッセイを執筆。アクセス数も途切れず年々微増。不定期更新。
-
英語日記ブログ「Really Diary」
2019年より開始。もともと英語の勉強のために始めたが、今ではすっかり純粋な日記。呆れるほど普通の内容なので、新宅に興味がない人は読んで一切おもしろくない。
-
音声ブログ「まだ、死んでない。」
2020年より開始。ロスのホームレスとのアートプロジェクトでYouTubeに動画をアップしたところ、知人にトークが面白いと言われたことをきっかけにスタート。その後、死ぬまで毎日更新することとし、コンテンツ自体を現代アートとして継続中。
-
読書記録
2011年より開始。過去十年以上、幅広いジャンルの書籍を年間100冊以上読んでおり、読書家であることをアピールするために記録している。各記事は、自分のための備忘録程度の薄い内容。WEB関連の読書は合同会社シンタクのブログで記録中。
- 前の記事
- 立ち喰いそば屋で哲学する
- 次の記事
- 人はある日にわかに歳をとる
関連記事
「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」を見た。
今日は気分が滅入ってるせいか、ごはんがまったくおいしくなかったぼくです。料理は愛 ...
新宅睦仁 個展「牛丼の滝」(高知)2014/10/2~10/14
まったく更新しておりませんが、ぼくは元気です。全力で個展の作品制作に励んでおる次 ...
新宅睦仁 個展「COLOUR ME WELL」One East Asia Gallery (シンガポール) 2018/8/1〜8/21
このたび、シンガポールにて個展を開催する運びとなりましたので、以下の通りご案内さ ...