庶民派、東京都知事 舛添要一

  2017/08/22

東京都知事の舛添要一が謝罪会見を開いた。かねてより海外出張費が高額に過ぎると非難を浴びていたが、ここにきて政治資金を家族旅行に当てていたことや、私的な飲食代を計上していたことが判明したのである。

政界の汚職は盗人と同じく、浜の真砂は尽きるとも、である。そうして街角インタビューでは、みな口を揃えてこう言う。「庶民感覚とかけ離れている」。

しかし私が思うのはまったく逆で、彼はつくづく庶民的であったということである。庶民で凡人だからこそ、ちょっと金を使える立場になったが早いか訳もわからず使ってしまったのである。

ふつうの会社員が出張することを考えてみればよい。たとえば、たまたま生まれ故郷に出張があった。ホテルには泊まらず、実家に泊まって親兄弟とゆっくり過ごした。いつもなら交通費だけで数万円は飛ぶところだが、もちろん会社の金である。とはいえ、会社からすればむしろホテル代が浮いてありがたいくらいであり、Win-Winの関係の典型であろう。しかし自営業の人からすればうらやましい限りである。そう、これは紛れもなく職権による利得なのである。

そんなことは誰でもやっていることで、他愛のないことだと思わるかもしれない。しかし、舛添都知事の件は間違いなくその延長線上にある。先の会社員が味を占めて、実家に帰る私用に合わせて、取引先との予定を組む。そのくらいのことは誰でも思いつくことである。

すべてはエスカレートする。家族との食事代を、取引先との会食だとして領収書を切ってみる。はじめこそ罪悪感もあり躊躇もしたが、すんなりと経費で落ちた。あとはそのバリエーションに過ぎない。

だから彼は庶民なのである。人の金でホテルに泊まるのは、得々として楽しかったのである。人の金で飯を食うと、えも言われぬうまさだったのである。

きっと彼は今ごろ、悔いている。いくらなんでもやり過ぎたと、悔いている。我々と同じ庶民感覚で、悔いている。

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

ご支援のお願い

もし当ブログになんらかの価値を感じていただけましたら、以下のいずれかの方法でご支援いただけますと幸いです。

Amazonギフト券で支援する
→送信先 info@tomonishintaku.com

Amazonほしい物リストで支援する

PayPalで支援する(手数料の関係で300円~)

     

ブログ一覧

  • ブログ「むろん、どこにも行きたくない。」

    2007年より開始。実体験に基づいたノンフィクション的なエッセイを執筆。アクセス数も途切れず年々微増。不定期更新。

  • 英語日記ブログ「Really Diary」

    2019年より開始。もともと英語の勉強のために始めたが、今ではすっかり純粋な日記。呆れるほど普通の内容なので、新宅に興味がない人は読んで一切おもしろくない。

  • 音声ブログ「まだ、死んでない。」

    2020年より開始。ロスのホームレスとのアートプロジェクトでYouTubeに動画をアップしたところ、知人にトークが面白いと言われたことをきっかけにスタート。その後、死ぬまで毎日更新することとし、コンテンツ自体を現代アートとして継続中。

  関連記事

いつか、みんな、くさる

2012/02/01   エッセイ, 日常

とんでもなくよくある独り言ブログになってきた。こんなはずでは。言い訳をすれば、今 ...

「LIFE feat マクドナルドビッグマック」のコンセプト

【20120503改変版追記:吉野家牛丼:ワンダーウォール出品用作品コンセプト】 ...

戦争は始まり続け終わらない

2009/02/27   エッセイ

朝からなんだか怖ろしくなってしまった。 画像は全身に毒ガスを浴びた人の足。DAY ...

大人と空白

人には青春時代というものがある。それはだいたいにおいて友人で彩られる。 ひとりか ...

もう無限とは思えない歳

2007/12/12   エッセイ

なんつーかこれは前から思ってることなんだけど、気分がいい時、明るい時って言葉が出 ...