子を授かろう(子どもは作るものではなく授かるもの)

  2017/08/22

かつて、子は〈作るもの〉ではなく〈授かりもの〉であった。受胎は人知の及ばぬことであり、文字通り神のみぞ知るそれは〈授かりもの〉というほかなかった。

翻って現代、子どもは〈作るもの〉となった。避妊も受精も親の一存であり、子は産まれる前から親の支配下に置かれるようになった――と、放送大学の講義で聞いた。

しばしばダウン症をはじめとする出生前診断の是非が話題になるが、その萌芽はここにあったのかと至極納得した。コンドームやピルは、今でこそ珍しくもなんともないが、よく考えてみれば、それは遺伝子操作やクローンにも繋がる科学の力に相違ないのである。

江戸時代の川柳に、膣に紙を丸めて詰めれば孕まないと言いくるめて挿入を試みる男がある。当時の人も笑うには笑ったろうが、その実、真偽のほどは知り得なかった。

いま、コンドームをつけるのは避妊の常識であり、マナーであり優しさだとも言われる。そう考えると、先の川柳の男は案外に〈優男〉だったのかもしれない。

選べなかったものが選べるようになったのが現代である。服なら色や形、食べ物なら和洋中、家なら立地から間取りまで。我々の祖先である庶民は、長くそのいずれの選択肢も持っていなかった。それが今では偉くなったもので、子どもを作るかどうかまで選べるようになった。

そうして男も女も、口を揃えて現況ではとても子どもを作れないという。だとすれば、昔は恐ろしく恵まれていて、みな安心して子を産み育てたのであろうか。

なんにつけても、選べるのであれば選ぼうとするのが人情である。しかしそれは所詮、猿知恵の系譜にある人知である。たかが蝿や蚊さえもいまだ満足に作れないのだから、こと人の生命の有りや無しやは相も変わらず神様の仕事である。

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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