死んでも甘いものが好き(健康志向に反する自販機のラインナップ)

  2017/08/22

昨日食べたものを忘れても、カロリーのことは忘れないのが現代人である。それに糖分、油脂、塩分、その他ビタミン、ミネラル、ファイバー云々と、世は健康志向である。

にもかかわらず、自販機のラインナップには変化がない。二十数年前の私が小学生のころと大差ない。果汁数パーセントのジュース、メロンソーダ、エナジードリンク、そして缶コーヒー含め、いやというほど砂糖および果糖ぶどう糖液糖が入っている清涼飲料水が7、8割を占めている。

売れないものは置くわけがないので、これは言うまでもなく売れ筋であり、マーケティングの結果こうなったものであろう。となれば、いったい多くの人々は全然健康志向ではないのかもしれない。

たしかに、甘いものはおいしい。生まれたての赤ん坊でも、甘味を好んでよく反応するのである。甘味は快楽にも似て、人間のもっとも求めるもののひとつに違いない。

しかし、健康のことを考えれば話は別である。糖分の取り過ぎは、肥満をはじめとする生活習慣病、高血圧や糖尿病など、その弊害は枚挙に暇がない。なんて、そんなことは私が言わなくても誰でも知っていることであろう。

だとしたら、あの自販機のラインナップは何を意味するのか。誰もかれも健康のことをああだこうだ言うが、本心ではどうでもいいのかもしれない。あるいは、健康志向という世論は、医療費削減を画策する国が流しているデマゴーグか。

そう考えて、はたと気がつく。健康志向とは、あくまでも〈志向〉であって、〈実践〉ではないのである。健康であるに越したことはないけれど、やっぱりおいしさを優先しちゃうよね、ということなのである。要するに「明日やろう」と同じ精神なのだ。

そうして呑気にいついつまでも明日が来ると思っている人が大衆としてある限り、自販機のラインナップが変わることはない。とどのつまり、永遠に変わらないということである。

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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