SMAP解散、あるいは崩御

SMAPが解散を発表した。結成から25年、日本人であれば知らぬ者はない、名実ともに日本を代表するアイドルグループである。

なんて書き出してはみたものの、別になんの感慨もない。本当に、心の底からどうでもよい。ただ、ふっと、前に名探偵コナンの漫画本の中にあった、『そう、彼女はアイドル(偶像)だったんだよ』みたいなセリフのことを思い出した。

確かに、アイドルは多かれ少なかれ偶像で、人であって人でないようなところがある。ときにアイドルはウンコをしないなどと言われるが、そのような非現実性はアイドルの要件であろう。

むろん昨今では、生活感のあるどこにでもいるような人がアイドルとして歓迎される向きもあるが、しかしそれとてひとつの偶像性であろう。我々一般人とどこまでも近似しているかのように見せかけて、しかし巧妙に差別化して商品とするのである。それはスーパーで98円のかまぼこが、居酒屋では板わさとして500円とって誰も文句を言わないことと似ている。

それはともかく、彼らは実によく売れた。何より人気がすさまじい。およそ生身の人間でここまで人気を得た者は歴史上類例がないのではないか。それこそ存命中のブッダやキリストの一生よりもよほど多くの人に彼らは崇拝されたのではないだろうか。

彼らの影響力たるや、かの時代から見れば神に等しい。聞けば今回の発表を受けて、10年以上前の彼らのヒット曲「世界に一つだけの花」の購買運動が起こっているという。SMAP解散阻止を旗印に、Amazonやタワーレコードでは軒並み品切れ状態になっている。

折しも天皇がお気持ちを表明され、生前退位を示唆されたことと前後する。日本国の象徴という点からすれば、事はほとんど匹敵すると言っても過言ではない。語弊を恐れずに言えば、彼らには解散というよりも崩御という方が似合いではないか。仮に今上天皇の退位がSMAP解散の日と重なったとしたら、あるいは後世の人はSMAPの解散で年号が変わったのだと思う人もあるやもしれない。いや、真面目な話。

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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