最後を知らない。

  2017/08/22

さるアイドルグループのひとりが18歳で急死したというニュースを見た。だけどすぐに忘れた。それからしばらく、「人生どこからでも始まるしどこからでも終わる」というツイートを目にした。そのアイドルのことを思い出した。

話は変わるが、唯一の親友と合コンをしている夢を見た。目が覚めて夢だと気がついて、さびしくなった。あいつと最後に合コンをしたのはいつだろうかと記憶を辿った。

しかし茫漠として、定かではなかった。ただひとつ言えるのは、確かにあいつとの最後の合コンになった日があった、そのことだけはあまりにも確かなことだった。

もちろん、合コンなんてくだらないことだ。なんなら今からだって、またやればいいだけかもしれない。だけど、あいつはもう結婚してしまったし、それだけじゃなく、何もかもがあまりにも変わってしまたったから、私の思い描くようなそれはもう二度とはできないだろうとわかる。

そこまで考えて、思う。どうして最後の日がわからなかったのだろうかと。これでおまえとの合コンも最後だとわかっていれば、私なりに気の持ちようもあったはずだ。いつもより高い酒を買ったり、気張った料理を用意したり、あるいは二日でも三日でもぶっ通しで飲んだりもしただろう。

だけどそれはわからなかったから、そのような特別なことはただのひとつもできずに終わってしまった。

当たり前だが、これはすべての事柄について言えることだ。今という時間の使い方や、家族団らん、親孝行。それらにこの手の後悔はつきものだ。

しかし、もしかすると、無駄にありがたみもなく流してしまったかのように思われるその過ごし方こそが、人間に与えられた唯一にして最高の時間なのではないだろうか。

特別だと思えば、気取りがでるし、肩に力も入る。自他の様子が気になって、抜かりないかと終始案じて落ち着かない。それはきっと、誰にとってもあまり快いものではないはずだ。

いつでも会える、また次がある。そう呑気に構えればこそ、自然に振る舞えて軽口のひとつも叩けるのである。特別に思えば思うほどこぼれ落ちていくそれは、意地の悪いなぞなぞにも似て、見ようとすると見えない「まぶた」のようなものではないだろうか。

答えを聞けば誰でも鼻で笑おうが、その答えは最後の日まで誰にもわからないから、みな粛々と人生という難題に取り組んで、しかし終わってみればこれ一切ふざけた夢の如しである。

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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