人はなぜ怒り、憎み、苦しむのか

  2017/08/22

つまり、どこにも行きたくない-DVC00081.jpg

はい、またしても絵の話ではありません。そしてタイトルが重すぎてかったるくてすみません。
というのも、おとといくらいから平成元年くらいに綾瀬(小田急で直通もある!)あたりでおきた女子高生コンクリート詰め殺人事件のことが頭から離れないのである。
前から知ってたような気がしなくもないけど、色々しらべてみたらこれ以上の残酷な殺され方はないというような事件なのだ。
たとえば、コンクリート詰めの遺体が発見された時、女子高生の性器にはオロナミンCのビンが二本ささっていたという。
それだけでもう、どれだけのことをされたかは推して知るべしであろう。
まあ詳しくは各々かってに調べてみればいいと思うけど、とにかくは僕はそのことばかりを考えてはや三日、くらい、たぶん。
なんで人はそんなことができてしまうんだろうと、あまりにもべたすぎる至極非生産的な問いばかりを繰り返してしまう。そしてまた、僕が彼女の親だったらどうするだろう、と。
即答で犯人らを是が非でも殺す、という結論に至る。たぶんまあ、だいたいの人はそうする、もしくはそうしたいと心底思うだろう。
でも、そこでよくいう報復の連鎖なんてことを考える。やり返して、それで誰が幸せになるというのだろう。
冷静に考えれば、その仏教っぽいガンジーっぽい発想に、確かに、と思い、また、許す心の尊さみたいなことも素直に理解し受け入れられるだろう。
しかしそれはあくまでも冷静な時であって、もっと言えば人ごとで第三者的立場の時にだけそう思えるのであって、きっと当事者であれば迷わずあらゆる鈍器あらゆる刃物をかき集めて殺しに行ってしまうんだろうと思う。
そこで許せる人は、たぶんガンジーとか、まあ仏陀とか、超人偉人であって、俗人はよくよく我を忘れるに違いない。
デビッド・フィンチャー監督の「セブン」のラストで、ブラッド・ピットの妻が殺されその首が届く場面がある。犯人は目の前に居て、丸腰である。しかしそこで犯人を殺してしまったら犯人の思うツボで計画通りにしかならない、だからモーガン・フリーマンはブラッド・ピットに殺すなと止める。ブラッド・ピットは苦悩し逡巡した挙げ句、しかし犯人を撃ち抜き殺してしまう。
見た人しかわかりそうもない説明だけど、とにかくは人間ってたぶん、そうしてしまうんだろうと思う。
許すという発想を持っていながらも、実際に当事者になった日にはそんな発想は吹き飛び、怒りに身を貫かれ、憎しみへと突き進んでゆく。
教養と実地とでもいえばいいだろうか。言うは易し為すは難しということだろうか。理性は結局、怒りの衝動の前に無力でしかないのだろうか。
コンクリート詰めほどのことでないにしろ、大なり小なり怒りや苛立ちはそこここに渦巻いていることだろう。
許す心は許せる気持ちは立派だ、素晴らしい、ほとんどの人がそう思うだろうし思っているだろう。
それなのに、人はまた今日も怒り、怒鳴り、いさかいを起こし、果ては殺し殺され血の気が引く。
それもまた人間の本性として仕方がないのかもしれない。しかし、少なくとも平時だけでも、ほんのわずかでも立派ではありたいと願うのもまた、人間の本性だろうと思う。
この果てなき複雑系、人間、大好き。

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

ご支援のお願い

もし当ブログになんらかの価値を感じていただけましたら、以下のいずれかの方法でご支援いただけますと幸いです。

Amazonギフト券で支援する
→送信先 info@tomonishintaku.com

Amazonほしい物リストで支援する

PayPalで支援する(手数料の関係で300円~)

     

ブログ一覧

  • ブログ「むろん、どこにも行きたくない。」

    2007年より開始。実体験に基づいたノンフィクション的なエッセイを執筆。アクセス数も途切れず年々微増。不定期更新。

  • 英語日記ブログ「Really Diary」

    2019年より開始。もともと英語の勉強のために始めたが、今ではすっかり純粋な日記。呆れるほど普通の内容なので、新宅に興味がない人は読んで一切おもしろくない。

  • 音声ブログ「まだ、死んでない。」

    2020年より開始。ロスのホームレスとのアートプロジェクトでYouTubeに動画をアップしたところ、知人にトークが面白いと言われたことをきっかけにスタート。その後、死ぬまで毎日更新することとし、コンテンツ自体を現代アートとして継続中。

  • 読書記録

    2011年より開始。過去十年以上、幅広いジャンルの書籍を年間100冊以上読んでおり、読書家であることをアピールするために記録している。各記事は、自分のための備忘録程度の薄い内容。WEB関連の読書は合同会社シンタクのブログで記録中。

  関連記事

大人のさびしさ

幼いころにはお母さん。思春期には友人。そして大人になれば恋人あるいは妻。それぞれ ...

幸福の美学

2008/09/12   エッセイ

明日は歯医者。何週間目か忘れたが歯医者。 仕事があるのはいいことだ、とつくずく思 ...

その道の人

音楽を作ってもらった。いや、曲を作ってもらったというほうが正しいのかもしれない。 ...

登場のとき、足下に

2008/02/26   エッセイ

画像は先日突然に火花を散らし、部屋の全てのブレーカーを落とした延長ケーブル。 そ ...

焼売と絵の展示とおかん

2009/11/29   エッセイ

おかんの話は別になんもないけどなんかのパクリっぽくて収まりがいいかなあ思ったから ...

当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載及び複製等の行為はご遠慮ください。

Unauthorized copying and replication of the contents of this site, text and images are strictly prohibited. All Rights Reserved.

Copyright © 2012-2024 Shintaku Tomoni. All Rights Reserved.